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「脳の老廃物」を除去するには、深い睡眠が必須だった

2019.03.17

脳の活動と睡眠の関係性を示す新たな研究結果が明らかになった。このほど科学学術誌で発表された「睡眠と脳の清掃機能」の最新研究が示しているのは、睡眠不足とアルツハイマー病の関連性や、ある種の麻酔が高齢者の認知障害につながる理由などだ。

論文は「睡眠と脳の清掃機能」の関連性について詳しく追究したもので、深い、ノンレム睡眠時にあらわれる、ゆっくりと一定した脳活動(デルタ波)と心肺活動が、脳の老廃物排出プロセスに最も効率がよいことが実験により明らかにされている。この知見により、睡眠不足とアルツハイマー病の関連性や、なぜある種の麻酔が高齢者の認知障害につながるのか説明できるという。

◆睡眠中に“脳の清掃”をするシステム

「睡眠は脳の老廃物排出システムにおいて非常に重要です。この研究では、深い睡眠であればあるほど効率的であることがわかりました」と説明するのは、この論文の筆頭著者であるロチェスター大学メディカルセンターのマイケン・ネダーガーである。「これらの知見はまた、睡眠の質や睡眠不足が、アルツハイマー病や認知症の発症を予測できるという根拠を、ますます強固なものにすることでしょう」

われわれの体内には、細胞に栄養を運んだり、細胞から排出された老廃物を運び出して処理するリンパ系がある。脳内にもこれによく似たグリンパティック・システムと呼ばれる働きがある。

かねて睡眠不足だったり睡眠の質が低かったりする人ほど、アルツハイマー病の原因のひとつといわれるアミロイドβ濃度が高いという報告があり、睡眠と老廃物除去の関連性が疑われてきた。では、このグリンパティック・システムの清掃効率は、睡眠の質により変化するのだろうか?

◆麻酔による実験から見えたこと

研究者らはマウスを使い、グリンパティック・システムによる清掃機能と睡眠の質の関連性を調べるために、6つの異なる麻酔方法で実験を進めた。そのうえで、マウスが麻酔下にある間、脳の電気活動、心臓血管活動、そして脳脊髄液の流れを追跡した。

彼らの実験では、深い睡眠状態に特有の、ゆっくりした一定間隔の脳波と心拍数を最もよく反映していたのが、6つの麻酔方法のうち薬物ケタミンとキシラジンを組み合わせたものだった。そしてこの“深い睡眠状態”において、老廃物排出を促すグリンパティック・システムが最も効率的に働くことが明らかになった。また実験では、心拍数が低くなるにつれて、清掃効果のある脳脊髄液の流れが大きくなることも確認されている。

◆術後の認知障害を避けられる可能性

われわれが年齢を重ねるにつれ、深いノンレム睡眠を達成するのが困難になることが知られていることから、この研究結果は、加齢・睡眠の質・アルツハイマー病の強い関連性に、臨床的な一石を投じることになるだろう。朗報は、睡眠の質を改善させることで、グリンパティック・システムによる清掃機能を向上させられるかもしれないということだ。

「麻酔と手術後の認知障害は大きな問題です」と、共著者であるデンマーク・コペンハーゲン大学のトーマス・リリウス博士は語る。「手術を受けた高齢患者のかなりの割合が術後せん妄を経験しているか、退院時に認知障害を発症または悪化させたりするのです」

実験で使用された麻酔薬のいくつかは、実際に臨床的に使用されるものに類似することから、手術後にしばしばみられる認知障害を避けられるかもしれない麻酔薬の種類が示唆されている。今回の研究からは、全身麻酔による認知障害の副作用を軽減させられる技術の開発が期待されるという。

 



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