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太陰肺経

【手の太陰肺経の流注】

手の太陰の脈は、中焦(中脘)に起り、下って大腸を絡い、帰って胃口を循り、膈を上って肺に集まる。肺から喉嚨へ行って、そこから横(中府・雲門)に腋下に出て、下って臑内を循り肘中(尺沢)に下る。臂内上骨の下廉(孔最)を循り、寸口(列缺・経渠・太淵)に入り、魚(拇指球)に上る、魚際を循り、大指の端(少商)に出る。
その支は腕後(列缺)より直ちに次指の内廉(大腸経)に出て、その端に出る。

中府、雲門、天府、侠白、尺沢、孔最、列缺、経渠、太淵、魚際、少商

◆中府(L1)
【穴名由来】何かが集まるところを「庫」あるいは「府」という。手の太陰肺経の脈は中焦より始まる。この経穴は手の太陰肺経の最初の経穴で中焦の気が最初に集まる所なので中府という。
【位置】雲門穴(鎖骨外端下際の陥凹)の下1寸。(第1肋間隙中)
【解剖】筋肉:大胸筋、小胸筋のところで、深部では第1内・外肋間筋。
    血管:上外側には腋窩動・静脈、胸肩峰動・静脈がある。
    神経:中間鎖骨上神経、前胸神経の分布、第1肋間神経外側皮枝が分布。
【主治】咳嗽、気管支喘息、胸痛、胸中の膨満煩悶感、肩背痛

◆雲門(L2)
【穴名由来】「雲」は雲霧を指し、たちのぼる湯気がもやもやとこもった様子のことで、「門」は出入り口のこと。この経穴は上焦(肺)にあり、中焦よりたちのぼった気が天気と交わり、手の太陰肺経の脈気として出発する所にある。この経穴を出発点に滋養物を含んだ雲霧状の気が十二経脈をめぐり全身にくまなく栄養を与えることから、雲門と名付けた。
【位置】鎖骨下窩にあり、烏口突起の内縁、腋窩動脈拍動部。
【解剖】筋肉:三角筋と大胸筋の間。
    血管:橈側皮静脈、胸肩峰動・静脈があり下方に腋窩動脈がある。
    神経:中間鎖骨上神経、外側鎖骨上神経、前胸神経の分枝、外側神経束が分布
【主治】咳嗽、気管支喘息、胸痛、胸中の煩悶感、肩・上肢痛

◆天府(L3)
【穴名由来】「天」は身体の上部をいい、臓腑で一番高い場所にある肺の意味もある。また、「府」はこの場合、全身の諸気が集まる肺の意味をいう。古人は目の前に真っ直ぐ伸ばした患者の腕を高く挙上し鼻先と上腕がぶつかる所をツボとした。鼻は肺窮で肺に代わり天気を受けるところと言われていて、それが天府と呼ばれる所以になっている。
【位置】上腕部にあり、腋窩横紋前端から尺沢穴に向かい下3寸、上腕二頭筋橈側縁。【解剖】筋肉:上腕ニ頭筋外側(外縁)。
    血管:橈側皮静脈及び上腕動静脈の筋枝。
    神経:外側上腕皮神経及び筋皮神経が分布。
【主治】肩や腕の疼痛、咳嗽、喘息、鼻出血

◆侠白(L4)
【穴名由来】侠は夾と同じ意で「白」は白色の意。「寿世保元」では侠白を取穴するとき「乳頭に墨で印をつけ、乳を挟むように上腕を胸の前で交差させ、乳頭に押しつけて墨がついた所がツボである」と記されている。肺は五行で金に属し白に属し、上腕内側にあるこのツボは白の肺を挟んで両脇に位置するので侠白と名付けられた。
【位置】上腕部にあり、腋窩横紋前端から尺沢に向かい下4寸。
【解剖】筋肉:上腕ニ頭筋の辺縁で直下は上腕筋。
    血管:橈側皮静脈及ぶ上腕動・静脈の筋枝。
    神経:外側上腕皮神経及び筋皮神経。
【主治】咳嗽、胸部膨満感、上腕内側痛。

◆尺沢(L5)
【穴名由来】昔の人は手関節から肘までを一尺とし前腕部を「尺部」と呼んだ。「沢」とは沼沢のことで低い凹地を指している。また、このツボは肺経の合穴は水に属し、手太陰の脈気があふれる水のようにこのツボに入る様子をたとえて尺沢と名付けた。
【位置】肘窩横紋上にあり、上腕ニ頭筋腱の橈側。
【解剖】筋肉:腕橈関節部で上腕二頭筋の外側で腕橈骨筋の起始部。
    血管:橈側反回動・静脈の分枝及び橈側皮静脈。
    神経:外側前腕皮神経及び橈骨神経の本幹が分布。
【主治】咳嗽、喀血、潮熱、呼吸困難、胸部の膨満感、咽喉部の腫脹・疼痛、小児驚風、小便頻数

◆孔最(L6)
【穴名由来】「孔」は穴の意で、「最」は第1の意。昔の人はこのツボが「熱病で汗が出ない」を治すのに最も効果的であると考え、また肺気を宣通し、腠理を開泄するので孔最と名付けた。
【位置】前腕前橈側にあり、太淵から尺沢へ向かい上7寸。尺沢下3寸。
【解剖】筋肉:橈骨の前面に位置する。腕橈骨筋、円回内筋の外縁で長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋の内縁。
    血管:橈側皮静脈、橈骨動・静脈。
    神経:外側前腕皮神経及び橈骨神経の浅枝が分布。
【主治】咳嗽、呼吸困難、喀血、咽喉部の腫脹・疼痛、肘・腕痛、痔疾患。

◆列缺(L7)
【穴名由来】「列」は古代、裂と相通じ、分裂、分かれるの意、「缺」は容器の裂け目、割れ目の意。このツボは手の腕関節部(手関節部)にあり橈骨茎状突起の割れ目のところに位置し、また手太陰肺経の絡穴で経脈がここから別行するの列缺と名付けられた。
【位置】橈骨茎状突起の上方、太淵から尺沢に向かい上1寸5分。
【解剖】筋肉:腕橈骨筋腱と長母指外転筋腱の間で、長橈側手根伸筋の内側。
    血管:橈側皮静脈及び橈骨動・静脈。
    神経:外側前腕皮神経と橈骨神経の浅枝が分布。
【主治】頭項部の強ばりと痛み、咳嗽、息切れ、咽喉部の腫脹・疼痛、口や眼のゆがみ、開口不全、歯痛、手や足の無力。

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